意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
「おまえの顔を見て言いたい。顔を上げて」

「嫌」

「ダメだ」

先輩は私のあごに手を当て、ぐいっと顔を上げさせられた。

「恵。俺もおまえが好きだ」

「ほんとに? 浅田先輩よりも?」

「美緒はただの幼なじみだ」

「でも、抱き合ってましたよね?」

「見たのか。あれは美緒を慰めただけだ」

「先輩は、浅田先輩が好きだから、彼女を作らないんじゃないですか?」

「違う。好きな女が現れなかっただけだ。おまえに会うまでは」

「さっき、何て言いかけたんですか?」

「おまえに聞きたい事があったんだが、もう必要なくなったよ」

「嫌。気になるから言ってください」

「分かった。だったら、好きな奴はいるのか?」

「います。水嶋先輩です」

先輩の顔が近付いてきて、私が目をつぶると、唇に柔らかくて温かいものが触れた。

私の、記念すべきファーストキスだ。


「それにしてもおまえ、すごい格好だな。鼻血が出そうだよ」

「きゃっ。見ないでください!」


(とりあえず、完)

※あとがきの後に長めのエピローグへと続きます。
よろしかったら、そちらもお読みください。
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