意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
「走りませんから、手を放してください」

「本当だな?」

「本当です」

「よし」

腕を放された私は、わざとゆっくり歩く事にした。
そうすれば、たぶん先輩は歩くのが速いから、自然と先輩から離れられる。

つまり走るのとは逆の方法で同じ結果になるはず。我ながら上手い考えだと思った。

案の定、すぐに先輩と私の距離は開いていった。しかし…

「おい、何もたもたしてる? とっとと歩け」

先輩は立ち止まり、振り向いて私を待っていた。

「どうぞお構いなく。お先にどうぞ」

私は精一杯の皮肉を込めて言った。
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