意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
バシッと、先輩がスパイクを打つ音が聞こえると思ったけど、そんな音はしないで、代わりにボールを持って、恐い目で私を睨む先輩がいた。

「全然ダメだ。俺を美緒、じゃなかった浅田だと思えと言ったろ?
今のトスじゃ緩いし高過ぎる。浅田のクイックはジャンプのタイミングが人より早い。打点はそう高くないからトスは低めだ。分かったか?」

「はい」

確かに私のノートに赤ペンでそう書いてあった。

私は咄嗟に水嶋先輩に合わせたトスを上げたけど、水嶋先輩は今、浅田先輩になりきってるんだ…

私もその気にならなくちゃ。

「もう一回お願いします!」

「よし。行くぞ」

再びボールが綺麗な放物線を描いて私の頭上へ飛んで来た。

それと同時に走り込んで来る水嶋先輩。いや、今は浅田先輩だ。

浅田先輩の早いクイックを頭に描き、私は速くて低めのジャンプトスを上げた。
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