意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
しばらくお互いに無言で歩き、もうすぐ駅に着くところで水嶋先輩が話し始めた。

「裕樹と美緒が付き合ってるのは知ってるか?」

「知ってます」

「だよな。ひとつ、いい事を教えてやろうか?」

「何ですか?」

「あいつらはもうすぐ別れるはずだ」

「え?」

「嬉しいだろ?」

「そ、そんな事ありません」

「嘘つくなよ」

「嘘じゃありません。私は人の不幸を喜ぶほど、性格悪くないですから」

それは本心だった。
自分でも不思議なくらい、裕樹先輩が浅田先輩と別れるかもしれないと思っても、嬉しいという気持ちは全く起きなかった。

むしろ、『どうして?』という疑問と、浅田先輩が可哀相という気持ちの方が強かった。
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