ワンダー、フルカラー
父さん曰く、臼田くんのおじいさんとおばあさんは今日の朝になってから突然ボケが始まってしまったらしい。しかし臼田くんが言うには、朝起きて会話をした時はそんな症状は見られなかったとか。
「実は今日…『行って来ます』が言えなかったのですよ。」
「行って来ます?」
お茶を用意して適当なお菓子を食べさせながら、ようやく落ち着いてきた臼田くんから話を聞き出す私。
今の彼はいつも通りの表情をしているけれど、少しでも刺激が入ると黒い何かが背後から溢れ出て来る…ような気がしてならない。それのせいで結構気を遣っているせいか疲れてきてしまった。
「おじいさんとおばあさんはもの凄く心配性な夫婦なのですが…」
臼田くんはお茶を一口だけ口に含むと、深呼吸をしてからことの説明をし始める。
「二人は僕の母親の両親なのです。母親は僕の父親との結婚を二人に反対されてしまって、ある日突然僕の父親と駆け落ちをしてしまったそうで。何も言わずに母親が出て行ってしまったから、家から誰かが出て行かれることに敏感になってしまったみたいです。」
「そっか…」
「はい…もしかしたら二人共、何も言わずに出て行ってしまった僕が原因で…」
言い終わるのと同時に、シュンと肩を落とし、臼田くんは目を閉じるのではなくて見開いてゆく。
落ち込み方が変だ…これはやばいかもしれない?
臼田くんがまた怖くなる気がする。そんな予感がして話を摩り替えることにした。
「う、臼田くん!そろそろ夕飯だけど!」
お菓子を与えた後に二時間後の夕飯の話題を出すのはどうかと思う。そしてこの話題の反らし方についても…メチャクチャすぎて何か嫌。
けれど臼田くんは我に返ったような表情へとなって、私の顔を恐る恐る確認するかのように覗き見てきては、アハハと言いながら苦笑いを浮かべた。
「そ、そうですよね!お腹がもう空いてきました、僕。」
「え、お菓子食べたばかりだよね?」
「僕ってイライラするとすぐにお腹が空いてくるというか…」
本人は照れながら言っておりますが、実際はイライラしているらしいです。そう言ったことに全く気付いていないみたいだけれど、確かに彼は今『イライラ』という単語を言ってしまいました。
(これは危ない…)
やっぱ今の彼は放っておいたら駄目だ。
とりあえず彼のイライラを静めさせなければならない…夕飯の用意だ。残り物のカレーしかないけれども温めて来よう。ご飯も朝炊いたのが釜に残っているから問題ない。
「実は今日…『行って来ます』が言えなかったのですよ。」
「行って来ます?」
お茶を用意して適当なお菓子を食べさせながら、ようやく落ち着いてきた臼田くんから話を聞き出す私。
今の彼はいつも通りの表情をしているけれど、少しでも刺激が入ると黒い何かが背後から溢れ出て来る…ような気がしてならない。それのせいで結構気を遣っているせいか疲れてきてしまった。
「おじいさんとおばあさんはもの凄く心配性な夫婦なのですが…」
臼田くんはお茶を一口だけ口に含むと、深呼吸をしてからことの説明をし始める。
「二人は僕の母親の両親なのです。母親は僕の父親との結婚を二人に反対されてしまって、ある日突然僕の父親と駆け落ちをしてしまったそうで。何も言わずに母親が出て行ってしまったから、家から誰かが出て行かれることに敏感になってしまったみたいです。」
「そっか…」
「はい…もしかしたら二人共、何も言わずに出て行ってしまった僕が原因で…」
言い終わるのと同時に、シュンと肩を落とし、臼田くんは目を閉じるのではなくて見開いてゆく。
落ち込み方が変だ…これはやばいかもしれない?
臼田くんがまた怖くなる気がする。そんな予感がして話を摩り替えることにした。
「う、臼田くん!そろそろ夕飯だけど!」
お菓子を与えた後に二時間後の夕飯の話題を出すのはどうかと思う。そしてこの話題の反らし方についても…メチャクチャすぎて何か嫌。
けれど臼田くんは我に返ったような表情へとなって、私の顔を恐る恐る確認するかのように覗き見てきては、アハハと言いながら苦笑いを浮かべた。
「そ、そうですよね!お腹がもう空いてきました、僕。」
「え、お菓子食べたばかりだよね?」
「僕ってイライラするとすぐにお腹が空いてくるというか…」
本人は照れながら言っておりますが、実際はイライラしているらしいです。そう言ったことに全く気付いていないみたいだけれど、確かに彼は今『イライラ』という単語を言ってしまいました。
(これは危ない…)
やっぱ今の彼は放っておいたら駄目だ。
とりあえず彼のイライラを静めさせなければならない…夕飯の用意だ。残り物のカレーしかないけれども温めて来よう。ご飯も朝炊いたのが釜に残っているから問題ない。