ワンダー、フルカラー
それに…

(『真夜』の方がまだマシだ…)

『マヨ』って言われているのと同じだけれど、臼田くんの呼び方には『マヨネーズ』のニュアンスは含まれていないから心地が良いのだ。どこかホッとする。
そして照れる。久しぶりすぎてドキドキしてしまう。
臼田くんは…もし私が名前で呼べるようになったらどう思ってくれるのだろう?驚いてくれるかな?

「今日は星が綺麗に見えそうですね…UFO出ると思います?」
「忙しかったら出ないんじゃない?」
「それもそうですね。」

…UFOの話を真剣な顔でしてくるような人間だ。変に期待をするのはやめておこう。


電車の中での臼田くんは、ぴょろ次郎の入った箱を大切そうに抱えたまま、器用に先ほど購入したインコの飼育の本を熟読していた。
地元に着いたら彼はぴょろ次郎の鳥かごがある自宅へ帰ってしまい、私はそのまま買い物をして帰ることに。忘れないうちに臼田くんに言われた餌と、便秘予防で食べさせるらしい菜っ葉をかごに入れて、その後は夕飯の買い物をする。
臼田くんがいたらなぁ…2日分のご飯が買えたのに。あの人何気に怪力だからいっぱい荷物を持たせられたのに。残念だ。
家に帰ってみると、臼田くんは早速鳥かごに入れたぴょろ次郎を私に自慢げに見せてきて。ご機嫌そうな顔で私を出迎えた。

「お帰りなさい。」
「…ただいま。」

…一瞬だけ違和感を感じた。『ただいま』だなんて生きている人間に何年ぶりに言っただろうか。
私は臼田くんに笑顔を向けながら、餌が入っている方の袋を彼に差し出した。
そんな臼田くんは笑顔でそれを受け取ってくれて…袋を渡した瞬間に触れた手が手伝ってしまい、保っていた平常心が切れて顔に熱が昇ってしまい、顔を見られまいと下を向きながら台所へと急いで向かう。

(心臓に悪い!!)

ああああ…これじゃあ母さんに挨拶をしにいけないじゃないか!臼田くんのせいじゃないけれどどうしてくれようかこの動悸!!

「いっそ心臓なんて止まってしまえええ…!」

死にたくはないけれども!心臓さえ止まってしまえばこんなに悩むことなんてないし!
こんなんでこの先一緒に暮らしていけるのか私…!
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