ワンダー、フルカラー
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青い空に白い雲。なんて今日は良い天気なのだろうか。
帰ったら昼寝でもしようか。いや、でも今から帰ると家に着く頃なんて空は真っ赤に染まっている。昼寝ではなくてそのまま就寝だなんてことになりかねない。
しかしこんな青すぎる空を見つめていると、思い出しては瞼に涙が溜まって…視界が歪んでしまうな。
「ハヤブサぁ…」
ハヤブサだなんて名前だが、奴は小さくて可愛らしい青い色をしたセキセイインコのことだ。昨日5年間もの時を一緒に過ごしたハヤブサが突然かごから脱走をしてしまって、悲しみに耽っていた為に今日は全く眠っていない。
だからこの暖かい日差しに便乗して眠ってしまおうかと思ったのだが…ダメなようだ。思い出した途端に眠気なんてものは吹っ飛んでしまう。
「おい栗井、暇ならちょっと手伝ってくれよ。」
教室の机の上で項垂れていると、廊下から煩い教師が声を掛けてきた。
顔を見るまでもなくコイツの名前を当てることが出来る。俺に声を掛けてきた教師は
「根津かよ…」
担任の根津 充(ミツル)…通称ネズミだった。
根津の担当科目は英語で、いい加減なところがあるが生徒からの人気は高い。俺は嫌いだけれど奴が好きっていう人間は全校生徒の3分の2を占めている。
まぁ…授業中に眠っていても奴は他の教師のように無理には起こさないから、俺の中では良い奴に部類される人間ではあるけれども。
「俺、今アンタの手伝いをするほど暇じゃないんで…」
根津が現れたということはもう直夜間部の人間が集まってくるのだろう。教室の見回りは奴の仕事らしいからな。
俺は机の横に掛けてある鞄を肩に掛けると、立ち上がって教室から出ていく。
廊下に出たら、春独特の暖かい風が俺の髪を撫でた。
「元気なくね?どうしたよ?」
風に当たって気持ち良い気分に浸っていた俺の目の前に根津はやって来て、奴は何故か楽しそうに俺へ元気のない理由を尋ねてくる。
…人の不幸を笑われている気がして、少しイラッとした。