ワンダー、フルカラー
「まぁ、本人が良いって言うなら俺は退散するけどな。」

しかし根津はさっきの異様なまでのしつこさを捨てて、俺の横を通り過ぎてから俺へと振り返って手を振って。いきなり過ぎるその出来事に俺は目を丸くした。

「じゃあな栗井ー、また明日なー。」

そして、根津はしばらく廊下を歩くと…そこで立ち止まり服のポケットからケータイを取り出して、画面を見てからそれを耳に当てる。
って、電話が着たから離れただけじゃないか根津の奴…もしそうだとしたら今すぐ学校から出ないと第2ラウンドに突入だなんて事になりかねないぞ。
『また明日』とか呑気に言っていたが、さっきのアイツのしつこさを見ると…あり得なくもない。

(今のうちに…!)

俺はカバンを両手で抱えると、根津のいる先にある階段へと早歩きで向かう。
今の時間は運が良い事に電車の本数が多い。すぐに地元に帰れそうだ。

「おい真夜子?どうしたんだよそんな小声で喋っちまって…」

通り過ぎた際に根津の話し声に耳を立ててみた。そして出てきた言葉に少しだけ驚く。
『真夜子』って誰だ…根津の女?そう言えば根津って独身だっけ?結婚していたっけ?
思わず少し離れたところで聞き耳を立てた。根津の電話が終わった瞬間に廊下を走れば余裕で逃げ切れることだろう。

「は?爽助君が何だって?」

今度は男の名前かよ!息子?息子か?いや、その前に女の名前が出ているっていうことは女の方の子供か?
良く分からないがどうしようもなく根津の人間関係が気になってきた…明日の話のネタはこれで決定だ。

「おいおい、いくら爽助くんが好きだからってよぉ…拾った動物を飼うだなんて何を考えてんだ。うちはペット禁止だぞ?」

お、爽助の方は子供で決定だな。やっていることが小学生だ。
しかし拾った動物を飼うとは…ハヤブサも誰かに拾われて飼われていたりするのだろうか?
根津の話から反れてハヤブサのことを考えていると、しばらくして根津の口から出てきた動物名に俺の目は開かれることになる。

「インコは確かに可愛いが、面倒見る暇なんてないだろ?しばらくは大目に見てやるけど何としてでも飼い主を探してだn「それどこで拾われたインコ?」
は?」
「聞いてくれ速急に!」

聞かずにはいられなかった。
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