ワンダー、フルカラー
「真夜子はなぁ…」

根津は口に手を当てて、笑いを堪えながら助手席にいる俺を見る。
いつもとは違う表情に見えた。笑っているというのに、何故か優しげな…不真面目っぽい根津でもそんな顔をするのか、的な。

「あの子はずっと、爽助くんのことしか見ちゃいないからな。」

…何となく、今の言葉で分かった気がする。

「…よそ見したりしないのかよ?」

あれは多分、真夜子のことをずっと見てきたから出来る表情…

「しねぇな。」

父親の顔だ。

「試しに振り向かせてみればどうだ?出来たら焼き肉奢ってやるぞ。」
「それ父親が言う台詞かよ…」
「父親だからそんなことが言えるんだぜー?」

最低だな父親…しかし真夜子を落とせば(←違う)焼き肉をご馳走とは…男子高校生にはその条件は美味しすぎるぞ。

「じゃあ俺頑張るかなー…」

根津の顔色を見ながら呟いてみた。

「頑張れー。」

しかし根津は適当な返事をしてきて…あまり心配されていない真夜子に少しだけ同情しつつも、俺は拳を握って気合いを入れる。
こう見えて俺、高校で人気あるし…女子を1人落とすだなんて楽勝だ。多分。

「ところで何でハヤブサだなんて名前をインコに?」
「ああ…まぁ、カッコよかったし?」
「ガキだなぁー…」
「悪かったな!」

真夜子は好きになれるとは思うけれど、絶対に根津のことは好きになれそうにない…そう思った。
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