ワンダー、フルカラー
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「今日はスカイフィッシュが飛び回りそうな天気ですね。」
「え、何その生物?」
次の日、1日だけだったけれどぴょろ次郎に夢中だった臼田くんはいつもの臼田くんへと戻っていて、空を見上げながらそんな不思議トークを繰り広げていた。
因みに今日の天気は青空が広がってはいるものの、強風がオプションで付いている為女子はスカートが危ない。
「スカイフィッシュはごく稀に写真に写り込むことがあるのですよ。なのでカメラを持ってきました。」
話が噛み合っていないことをまずはツッコみたかったけれど、とりあえずそんなくだらない理由でカメラを持ち歩くことを注意するべきなのだろうか…とか思ったりしたけれど敢えてのスルーをして、私は彼より先を歩く。
「あそこら辺が怪しいです!」
(あなたの方が怪しいですから!)
しかし心の中ではツッコませてもらう。
下手にツッコんで腹黒くなられたら困るもん…マヨネーズにされるのだけは嫌だ!
「そんなんじゃ名前で呼んであげないんだから…」
さりげなく小さな声で、呟いてみる。
「じゃあどうしたら名前で呼んでくれるんだよ?」
すると真後ろから返答が返ってきて。しかし口調から言って振り返ったらまずい気がして…足を止めてカチコチに私は固まった。
スイッチ押しちゃった!?いや、でも今まで臼田くんがこんな乱暴な言葉を使っているところだなんて見たことが…
「真夜から離れてください生クリームさん。」
「え?」
…どうやら私の勘違いだったようだ。
生クリーム…だって?
「栗井だっつのソース野郎。」
背後から人が消えた気配がしたから安心して振り返ってみると、臼田くんの目の前に昨日家にやってきた栗井くんがいた。
「僕もソースじゃなくて爽助っていう名前があります。名前で呼びましょう。」
「そうかそうか。じゃあその言葉をそのままお前に返すよウスター。」
「ウスターじゃなくて臼田です、クリームさん?」
(うわぁ…)
出会って早々喧嘩をおっ始める2人。
臼田くんがあそこまで敵意を剥き出しにするのは初めてで…どんだけぴょろ次郎のことを引きずっているのだろうか、あの人は。