ワンダー、フルカラー
「ただいまー!!」
「た だ い ま…」

いっぱい安く買えた私は元気良く、疲れ果てた爽ちゃんは今にも死にそうな声で挨拶をして。玄関に腰を下ろしながらゆっくりと靴を脱ぐ。
ローファーだから座らなくても脱げるけれど…端に今ある靴たちを寄せたかったから仕方なくという感じだ。父さんの靴の他に運動靴があったから気になったんだ。

「誰ですかね?」

爽ちゃんは勝手にその靴を持ち上げると、靴の中に書いてあるサイズに目を通す。
…って、何勝手にお客様の靴底だなんて覗き見ているのこの人は。

「とにかくお客さんに変わりはないから、静かに台所に行こう。」
「はい。」

靴を端に寄せて玄関を綺麗にしてから、私達は音を立てないように気を付けて、静かめに台所へと移動する。
しかしリビングを抜けないと台所へ行くことは叶わないというか、リビングと台所は繋がっているから…仕方がなくそこを通るのだけれど、

「栗井、お前いつまでうちにいる気だ?」
「いつまでだろうな?」
(あ…)

聞こえてきた声と、その名前に驚いてその場に固まってしまった。

「どうかしました?」

後ろから爽ちゃんが声を掛けてくれて我に返ることは出来たけれど…

「ごごごごめん爽ちゃん!私洗濯物入れて来ないといけないからこれよろしく!」
「え、」
「じゃっ!」

中にいる人がいる人だから、この部屋に入って台所へ行くという気だなんて起きない!!

(嫌あああ!!)

頭の中で叫びつつ、ヅカヅカとベランダへと向かう私。
っていうか何で栗井くんがこの家にいるのですか!?父さんも一緒にいたみたいだけれども!!一体!!何でっ!?

(早く帰ってくれないかなぁ…)

とにかくそう祈るばかりだった。
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