ワンダー、フルカラー
「…何ですか、これ。」

わざわざラッピングをされた物を僕にくれるとか…もの凄く怪しい。怪しすぎる。きっと何かを企んでいるに違いない!
裏でもあるんじゃないかと思って尋ねてみたけれど、彼は若干呆れたような顔をさせながら、僕にラッピングをされた箱の説明をしてくれる。

「お礼だよお礼…ハヤブサの。」
「ハヤブサ…ああ、」

そう説明をされて、思い出す僕。
そういえば僕は少し前に、彼の飼っていたインコを保護して…どうやらこれはその時のお礼ということらしい。

「それの中身クッキーだから。真夜子と食ってくれ。」
「ありがとうございます…」

素直にお礼だと言われたことに少し驚きつつ、僕は頂いたクッキーを棚へと乗せて。作業の続きを再開させた。
意外だった。実は義理に熱い人だっただなんて。

「後さ……」

もう用事が済んだものかと思っていたけれど、彼はまだ僕と話したいらしい。それがもの凄く怪しく感じたけれど、お菓子を頂いた恩義もあるから今日はおとなしくしていよう。
僕は再び彼を見ると、『何でしょう?』と尋ね返す。

「真夜子さ、元気かなとか思って。」
「真夜?」
「ああ、真夜子。」

一旦持っているものを袋へと戻してから、その質問に関して少し考えてみる僕。
元気ではある。しかし今日はどこか変……こういう場合はどう伝えたら良いのだろうか?

「……元気ですよ、多分。」

悩んだけれど、僕は曖昧さを含みつつ彼の質問に答えた。

「多分って何だよ…」
「多分は多分です。」
「意味分かんねぇ…」

僕にだって真夜のことが分からない時があるのだから仕方がないじゃないですか。

「用事済んだか?栗井。」

僕と会話をしていた彼だけれど、おじさんに声を掛けられるとすぐにそちらへと振り返る。

「ああ、もう帰るから。」

そう答えると、彼は鞄を手に取って。そのままリビングから出ていってしまった。
一応見送りだけはしてあげよう…そう思ってリビングから出ようとしたら、

「爽助くんちょっと、」
「はい?」

おじさんに呼び止められて。その場に立ったままソファーに座るおじさんと少し話をする羽目となったという。
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