ワンダー、フルカラー
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洗濯物を畳む前にやらなければならないことを思い出して、私は仏壇のある部屋へと向かう。
母さんに帰ったことを知らせなければならない。たとえ死んでいたとしても、天国にいる母さんに…テレパシー的なものが送れたら良いな、とか有り得ないことなのにそんなことを思ってしまって。

「母さんあのね、今日の夕飯またカレーだよ。」

どうでも良い報告だけれど、楽しんでいるって事を伝えたいから例えどうでも良い出来事であっても報告は欠かせない。

「爽ちゃんが食べたいって言ったんだ。だから頑張って作るからね?」

写真に写っている母さんはどんな事を話しても常に笑顔でいてくれる。だから気持ち良くお喋りが出来た。

「…よし、」

今日の報告を終えて立ち上がり、洗濯物が干されている庭に出る準備を始める私。
普段…というか外では全く結ばない髪の毛を1つ結びにして、着ていたブレザーを脱ぎ捨て。楽めな格好になってから、その部屋から庭へと出る。
サンダルを履いて、近くにある干されたものに手を伸ばして、部屋の中へと放り投げようとした
その時だった。

「真夜子っ!」
「うはぁ!!」

突然何者かに声を掛けられて、しかも肩を掴まれて…驚いてしまった私は手に持っていた洗濯物を落としてしまってまぁ大変。
ああああ…やっと昨日出してくれた父さんのズボンが…洗い直す羽目になってしまうだなんて!

「許さんぞお前ええええ!!」
「ええええ!?」

家事のことになると結構人が変わる私は、肩を掴んだままでいる犯人にギロリと振り返る。
本当最低だよね。ビックリマークが付くくらいの大きな声でそんな…いきなり名前を呼んでは肩を掴んでくるだなんて。私驚かされるということに全く慣れていないから絶対寿命が1年は縮んだと思います。
だけれど、そんな事をしてきた人物もね、私の心臓にはよろしくない人でね?

「く、」

拾った父さんのズボンをまた落とす羽目になってしまった事に、少しイラッとさせられた挙句の果ての登場だったものだからね、正直困りましたね、はい。
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