ワンダー、フルカラー
「昨日のアレって解決したみたいだな。」

私の目の前に栗井くんはやって来ると、彼は私が落としたズボンを拾いながらそんなことを尋ねてくる。

「昨日のって?」
「臼田関係で悩んでただろ?」
「ああ…うん。」

あれね、昨日のあの交差点で出くわした時の。

「お陰様で何とかなりました。」

ぺこりとお辞儀をした私は、栗井くんから父さんのズボンを奪い取って、それを端の方へと寄せておき、更に洗濯物を取り込みに行く。
栗井くんはめんどくさいことに縁側へと腰を下ろしてくれて、私へ話し掛けるということを続けてくれた。それに困った私は彼を背にするように立って、目を合わせないようにする。
いや…合わせたくないんじゃなくて、

(合わせられない…)

昨日のあの頬へのキスが全く忘れられないんだ…怖いんだ。どうして彼はあんなことをしたくせに平然とした態度で私に関わろうとすることが出来るの?
…だけれど、

「…栗井くんさ、」

聞かなければならないことがあるから後ろを向かないと!
そう決意をして、私は彼へと振り返った。
栗井くんは不思議そうな顔をさせながら、私のことを見つめている。

「えっと…」

何故か目を合わせただけで緊張をした。やっぱり昨日のあれのせいだ。

「…栗井くん、あのね…」

緊張はしているけれど、今相談をしないと次がいつになるかだなんて分からない。だから、頑張って質問をしてみた。

「栗井くんは少年漫画って読んだりするの?」

言ってやった。私はついに言ってやった。今日の午前中から聞こうか悩んでいたことをついに聞けた!偉いよ真夜子!!
自分で自分を褒めつつ、私は彼の返答を待つ。
栗井くんはそんな私の質問に少し驚いたようで、不思議そうな表情が更に不思議そうなものへと変えて…

「…悪い。あまり読まないわ。」

最悪の答えを返してきた。
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