ワンダー、フルカラー
(よ、)

予想外だった…まさかいかにも『少年漫画を読んで育ちました』的な顔をした彼が、まさかあまり読まないだなんて…!

「うちって漫画禁止だからさ。だから詳しくないし…力になれなくて悪い。」
「そっか…」

そして意外すぎる事情にも驚かされた。まさか漫画を読むことを禁止されていただなんて…結構軽いことをしてくれるから今までそういう可能性を彼に抱いたことがなかったよ。
人って見掛けに寄らないんだなぁ…

(…って、見掛けで判断したら駄目だよね。)

いかんいかん、私ってばもの凄く失礼なことをしてしまった…そんなことを言ったら爽ちゃんなんて彼よりも凄くなってしまうでしょうに。綺麗な顔をして中身は結構黒いとか…不思議くんだとか。普通は痛いと思うところですよね。

「あ、でもたまに学校で読ませてもらったりしてる。」
「え、」

お、これはこれは…決して読んでいないという訳ではないのですか。

「じ、じゃあ読んだことのある漫画で良いや!それ教えて!」

私はスカートのポケットから生徒手帳とペンを片手に、隣に腰を下ろして栗井くんへ質問をしだす。
栗井くんはそんな私を見て柔らかく笑うと、指折り数えてそれらを教えてくれた。

(勇気出して良かった…)

今日の朝から悩んでいたものが嘘のように消えてなくなってしまったという。
良く考えてみたら栗井くんがやってくれたことって…挨拶のようなものだし?そこに深い意味はないのだろうし…

「…真夜子は臼田のことになると必死だな。」
「え?」

一通り聞き終わって、再び洗濯物を畳もうと縁側から立ち上がった時、栗井くんが突然私に言い放つ。

「わ…分かっちゃうものなの?こういうのって…」

栗井くんって肝心してしまう程人のことを見ているような気がしてならない。

「まぁな。」

ニッと悪戯めいた笑顔を向けながら、栗井くんはその場に立ち、私へと近付いて…って、ちょっと近すぎやしないだろうか。足が足に当たっているのですが。

「…あのさ、」

そんな距離の中、栗井くんの顔と私の顔がすぐ近くにある中、彼は何かを言おうと口を開く。
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