ワンダー、フルカラー
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『それは僕に言われても困ります。』
『えええ…俺が言うと逆効果だからさぁー…頼むよ爽助くん!』
『だから困りますってば。』

(ジャガイモを入れるなと言われても…)

おじさんに呼び止められた理由というものは、とてもくだらないものだった。
カレーにジャガイモを入れるのが嫌だったらしい。カレーにはジャガイモが付き物だというのに何てことを言っているんだあの人は…しかも僕、ジャガイモ好きだからその要望は聞き入ることが出来ません。
しかも僕を使って真夜に言ってくれだなんて…それって逆効果だと思う。
泣きべそをかき出したおじさんを放置して、僕は真夜の取り込んでいる洗濯物を手伝おうと思い、その部屋へと入る。

「おばさんこんにちは。」

この家には守らなければならない決まりがあり、仏壇の部屋に来たら必ずおばさんの写真に挨拶をしなくてはならないらしい。
理由は家内安全の為だとおじさんは言う。おばさんが生きていた頃、おじさんはおばさんの尻に敷かれていたから怒りを抑える為だと真夜は付け足していた。
おばさんの容姿は今の真夜にそっくりだ。おじさんの部分で似た場所というのは…目の輝き、だろうか。おばさんの瞳には優しげなものを感じるけれど、真夜からはおじさんのような強気なものを感じる。
おばさんにそんなことを報告したら……笑われてしまうだろうか?

「…ん?」

写真から目を反らして、開いていた戸窓を見てみると、真夜の姿が目に止まる。
近付いて声を掛けようとすれば、近付くに連れてカーテンで隠れていた場所から段々と…

「クリーム…くん?」

彼がいて。それだけで反射的にイラッとしてくるのに、更にイラッとするような光景だったが為に『何で?』と思うよりも前に体が先に動いていた。
彼の目が嫌いだ。真夜に向ける視線が不愉快。
真夜も真夜で少し腹が立つ。どうして後から現れたそんな奴とあんなに至近距離で話していられる訳?誰と話していようが勝手な筈なのに、何でか知らないけれど真夜のことも若干腹立たしい。
とにかく2人を引き離したい。こんな世界を見ていたくない。
裸足のまま出た僕は、真夜のことを引き寄せて。彼のことを思いっきり睨み付けてやった。
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