ただ君が好きだから
「なんだよ?」
「口調、崩れたなぁって思って。一人称も『俺』になってるし。真尋ちゃんの前でも、そういう風にしたらいいのに」
「……出来るワケないだろ。執事が主人に素を見せてどうすんだよ……」
執事は、ただの世話係。
主人が満足できるよう、全力で尽くす。
ただ、それだけ。
「真尋ちゃんが可哀想だなぁ……」
「あ? 何か云ったか?」
「別に? 何でもないよ。律花は鈍いなぁって思って」
「俺の何処が鈍いんだよ」
「ぜーんぶ」
「全部って……」
「全部は全部だよ。じゃ、僕達も教室に行かなきゃ。またね、律花」
そう云って、桜弥は未だに寝ぼけ眼の桜羅を連れて新しいクラスへと向かった。
「鈍いって、何に対してだよ……ったく……」
空に向かって何やら叫んでいる那智を放置して、俺も新しいクラスへと向かった。
暫くすると背後から、「律花ったら、放置プレイ!? 放置プレイもいいけど、拘束プレイの方がオレは好きです!!」などという那智の発言が聞こえてきたが……聞こえないフリをした。
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