ただ君が好きだから
 
 
 
 
10時30分を過ぎた頃、新入生達が続々と学校の敷地内へ入ってくるのが見え始めた。
校門前は送迎車でギュウギュウに混んでいる。
 
 
俺達が通っている、この高校。
名は『四つ葉学園』といい、身なりのいい生徒達が通っている、所謂『お金持ち学校』というやつだ。
 
俺達は旦那様……真尋お嬢様の父親のおかげでこの学園に通えている。
理由は、俺達5人分の学費等もすべて出してくれているから。
「真尋の世話をしてくれているんだから、こんなのは当たり前だよ」と旦那様は笑っていたけれど……正直、最初は肩身が狭かった。
実の親子でもないのに、こんなに良くしてもらっていいのかと悩んだ時期もあった。
けれど、後に理解した。
 
『旦那様への恩は、真尋お嬢様に精一杯仕えることで返そう』……と。
 
そして、5人で改めて『真尋お嬢様を一生守っていこう』と胸に刻んだ。
 
 
 
 
 
 
「律花、そろそろ行くよ~? 新入生達にリボン付けてあげにいかなきゃ」
 
 
「あ、あぁ」
 
 
教室の窓から新入生達を眺めていたら、背後から那智に声をかけられた。
珍しく、普通に。
俺は那智の言葉を素直に聞き入れ、手にしていたリボンを見つめた。
 
桜色をしたリボンに、四つ葉の飾りがついたもの。
 
四つ葉学園には、入学式前に新3年生が新1年生の胸元に入学記念のリボンを付けてやるというプチイベントがある。
誰に付けてやるかは自由なため、出来れば真尋お嬢様に付けてやりたいんだが……ちゃんと時間通りに快里が連れてこれるかが問題だよな……。
 
 
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