ただ君が好きだから
 
 
「っはは! ほんま、真尋は分かりやすいな」
 
 
「わ、悪かったわね……単純で!」
 
 
頬を膨らませて快里を軽く睨むと、快里はニコリと笑った。
でもすぐに笑顔は消えて……真剣な表情へと変わった。
 
 
「なぁ、真尋? そろそろさ、そんなんせんでもええんちゃうかな……」
 
 
「な、なんの話……?」
 
 
話を逸らそうといろんな話題を頭に巡らせるが、快里が食いつきそうなものは浮かばない。
 
 
「ええ子を演じるん、もうええんちゃう? もう……ガキん頃とちゃうんやからさ。ええ子演じんかったって、友達できるよ」
 
 
「…………だ、って……」
 
 
いい子じゃなかったら、誰からも好かれないでしょ……?
 
感じの悪い子となんて、友達になりたくないでしょ……?
 
 
だから、あたしは一生懸命に演じてきたのに……。
 
 
『只今より、第54回 四つ葉学園 入学式を執り行います』
 
 
ふいにそんな言葉が耳に入ってきて、改めて周りを見回してみると其処にはいつの間にか、大勢の生徒達が椅子に座って壇上を見つめていた。
 
隣に座っている快里も其れに気付いたらしく、視線を前に向けていた。
 
 
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