ただ君が好きだから
入学式が行われている間、ずっと、快里に云われたことを考えていた。
校長先生の祝辞も、
偉い役員の方の祝辞も、
学校に多額の寄付をしてくださっている方の祝辞でさえも……
何も耳には入ってこなかった……。
ただただ、ずっと……
快里の言葉ばかりが頭の中でぐるぐると巡っていて……
今まであたしがしてきたことは無駄だったのかな……とか、
ちゃんと演じられていなくて周りの人に不快感を与えていたのかな……とか、
不安ばかりが溢れてきて、止まらなかった……。
「あ、真尋ちゃん。入学式終わったんだね?」
入学式が終わって体育館から教室へ移動していた時、桜弥と桜羅に話し掛けられた。
桜弥は相変わらずの笑顔で、桜羅は相変わらずの寝ぼけ眼。
思わず笑いそうになってしまった。
「ん。今、終わった」
「どうしたの? なんか元気ないね?」
「そんなこと、ないよ」
「嘘。真尋、嘘ついてる……」
桜弥なら誤魔化せるかと思っていた矢先、桜羅があたしの顔を至近距離で見つめてきた。
そして、一言、そう云った。
有無を云わせない瞳で見つめられて、あたしは何も云えなかった。
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