ただ君が好きだから
 
 
「……まさか、快里に何かされた? もしくは、何か云われた?」
 
 
桜弥の言葉に、あたしは肩をビクつかせる。
隣にいた快里も顔色を青くさせた。
 
 
「その反応……快里、真尋ちゃんに何か余計なこと云ったね……?」
 
 
ギロリ、と桜弥は快里を睨みつける。
桜弥と桜羅からは、どす黒いオーラが放出されていた。
 
 
「ちょ、怖っ!! 桜弥、なんか怖いって!!」
 
 
「りぃちゃん? そんな焦るってことは、心当たりがあるってことだよね……? 何してくれちゃってんの……マジで殺(ヤ)っちゃうよ……?」
 
 
「桜羅も怖いって! つーか、昔の呼び名で呼ぶな!!」
 
 
ジリジリと快里を追い詰めていく、桜弥と桜羅。
桜羅は快里の胸倉を掴み上げている始末。
ヤバい、止めないと……。
 
 
「か、快里は何もしてない! ホントに何でもないから……。ちょっと、入学式が長くて疲れちゃっただけ」
 
 
へへ、と笑えば桜弥に優しく頭を撫でられた。
 
 
「真尋ちゃんが云いたくないなら、僕はもう何も聞かないよ。……でも、どうしてもツラくなった時は、ちゃんと云って? 分かった?」
 
 
ニコリと優しく笑む桜弥につられて、あたしも笑んだ。
背後からは桜羅が、ギュッと抱き締めてきて……モヤモヤとしていた気分が少しだけ晴れた気がした。
 
 
.
< 23 / 27 >

この作品をシェア

pagetop