ただ君が好きだから
「……まさか、快里に何かされた? もしくは、何か云われた?」
桜弥の言葉に、あたしは肩をビクつかせる。
隣にいた快里も顔色を青くさせた。
「その反応……快里、真尋ちゃんに何か余計なこと云ったね……?」
ギロリ、と桜弥は快里を睨みつける。
桜弥と桜羅からは、どす黒いオーラが放出されていた。
「ちょ、怖っ!! 桜弥、なんか怖いって!!」
「りぃちゃん? そんな焦るってことは、心当たりがあるってことだよね……? 何してくれちゃってんの……マジで殺(ヤ)っちゃうよ……?」
「桜羅も怖いって! つーか、昔の呼び名で呼ぶな!!」
ジリジリと快里を追い詰めていく、桜弥と桜羅。
桜羅は快里の胸倉を掴み上げている始末。
ヤバい、止めないと……。
「か、快里は何もしてない! ホントに何でもないから……。ちょっと、入学式が長くて疲れちゃっただけ」
へへ、と笑えば桜弥に優しく頭を撫でられた。
「真尋ちゃんが云いたくないなら、僕はもう何も聞かないよ。……でも、どうしてもツラくなった時は、ちゃんと云って? 分かった?」
ニコリと優しく笑む桜弥につられて、あたしも笑んだ。
背後からは桜羅が、ギュッと抱き締めてきて……モヤモヤとしていた気分が少しだけ晴れた気がした。
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