ただ君が好きだから
 
 
「お嬢様の友達作り……難しくなりそうだな……」
 
 
「え? どうしてですか?」
 
 
「よく考えてみろ。新入生の主人を待っている執事が、3年生にこれだけいるんだ。勿論、新入生の中にだって契約済みの執事と主人がいるだろう。と、いうことはだ……お嬢様を友達として受け入れてくれる奴らが今年は極端に少ないということになる。最近は不況のせいもあってか……家柄がどうのとか、お嬢様の品格や名誉に関わるとか云って、執事が自分の主人に不相応だと判断した人物は極端に避ける傾向にあるんだよ」
 
 
ひと通り説明すると那智は暫く考えて、やがて「ふむ……」と声を発した。
 
 
「それなら、真尋嬢は大丈夫じゃないですか。現に、ああやって努力してますし」
 
 
「それがダメなんだよ……」
 
 
「何故に……」
 
 
「演技なんてものは、いくら完璧な人間がやったって……いつかはボロがでる。というか、完璧な人間なんてものはこの世に存在しない。お嬢様だって、いつかはボロがでてしまう。いくら頑張ったって……お嬢様は……報われないかもしれない……。せっかくできた友達だって、嘘をついていたと知ったら離れていくかもしれない。そうなったら、お嬢様は絶対に立ち直れない……」
 
 
強気のように見えて、実は弱気で寂しがりやな真尋お嬢様……。
 
照れて突き放すような言い方しかできなくて、いつも後悔して……
 
いつも、いつも……
 
自分を自分で責めて、傷つけてきたんだ……。
 
 
もう、そんな思い……俺はさせたくない……っ!
 
 
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