ただ君が好きだから
 
 
 
 
午前6時30分、お嬢様の起床時間。
 
 
春といえど、まだまだ肌寒い日が続いている。
 
そんな中、予想通りのお嬢様の反応。
 
 
「……お嬢様、朝ですよ」
 
 
お嬢様の部屋のカーテンを開けると、朝日がお嬢様の顔を照らした。
ベッドの中で眠っていたお嬢様が、眩しそうに眉を顰めた。
 
 
「お嬢様、お目覚めになってくださいませ」
 
 
「ん、ぅ……」
 
 
小さく柔らかなお嬢様の肩を軽く揺すりながら、目覚めを促していく。
目を覚ましていただかないことには、紅茶を淹れることも出来ない。
 
 
「……ゃ、ぁ、まだ……寝る、の……」
 
 
「いけませんよ。本日は入学式でしょう? 初日にきちんと顔合わせをしておかないと、後々に困ったことになります」
 
 
「ん~……」
 
 
もぞもぞと動きながら、お嬢様は仕方なく身体を起こした。
目元を手の甲で擦り、ぼーっと布団を見つめている。
 
 
「おはようございます、お嬢様」
 
 
ふわりと微笑して、お嬢様に目覚めの紅茶を手渡した。
熱くもなくぬるくもなく、丁度良い温度の紅茶をお嬢様はゆっくりと飲んでいく。
 
 
「如何でしょう? 本日もお嬢様の好きなハーブティーを御用意致しましたが」
 
 
「ん。すごく美味しい」
 
 
「左様でございますか。それはようございました」
 
 
ホッと少し安心して、お嬢様からティーカップとソーサーを受け取った。
 
 
「後程、桜弥と桜羅が制服を持って来ると思いますので。二度寝せずに、きちんと起きてお待ちになっていてくださいね」
 
 
そう注意すると、お嬢様はムッと表情を変えた。
 
 
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