ただ君が好きだから
 
 
「……ケーキはいいから、朝食の準備をしてくれないか……」
 
 
「あ゛。忘れとった……。今すぐ準備するさかい、堪忍して?」
 
 
快里は申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせ、チラリと見上げてきた。
 
 
「分かったから、早くしてくれよ? お嬢様は、もうお召し替えをされているからな」
 
 
「えぇ!! マジでか!! そら、急がなあかんな」
 
 
ワタワタと慌てながら、朝食の準備をする快里。
その姿を確認して、調理場を出た。
 
 
「あとは……那智だが、極力……アイツには関わりたくないな……」
 
 
げんなりとしながら、那智がいるであろう食堂へと足を向けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「那智、テーブルのセッティングは終わったのか……て、何してんだ……」
 
 
食堂の扉を開いて那智に声をかけながら中へ入ると、案の定、那智の姿が其処にはあった。
そして、これまた予想通りの光景が広がっていた。
 
 
「嗚呼……。美しく磨かれた銀食器達……朝日に照らされて、とても綺麗だ。でも、それ以上に美しいのは……このオレだよね!!」
 
 
「……朝っぱらから気持ちが悪いぞ、お前」
 
 
「あ! 律花!!」
 
 
「毎朝毎朝、カトラリーを磨きながら悦に入るな……」
 
 
冷めた視線を送りながら並べられた食器類を確認していると、那智の瞳がキラキラと輝き始めた。
 
良からぬスイッチを入れてしまったかもしれん……。
 
 
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