ただ君が好きだから
 
 
 
 
 
 
「とっても素敵だよ、真尋ちゃん」
 
 
「ん。すごく可愛い。真尋のために作られた服だよ」
 
 
お嬢様の部屋の前に到着した時、中から桜弥と桜羅の声が聴こえてきた。
どうやら、お嬢様の制服姿を2人で絶賛しているらしい……。
 
 
「お嬢様、失礼しますよ」
 
 
軽くノックをして、扉を開ける。
案の定、部屋の中央では制服姿のお嬢様が立っていて、その両脇では桜弥と桜羅が手を叩いて絶賛していた。
 
 
「律花、見てよ。可愛いよね、真尋ちゃん」
 
 
「一目見ただけで惚れちゃうよね、律花」
 
 
「……お前らは、どういう答えを期待してんだ……?」
 
 
お嬢様の両肩に手をまわしながら、桜弥と桜羅は首を傾げて答えを待っている。
 
 
「ほら、お前ら2人は出てけ。朝食の準備を手伝ってやってくれ」
 
 
そう云いながら2人を部屋から追い出して、お嬢様をドレッサーの前に座らせる。
 
 
「さて、本日はどのようなヘアスタイルに致しましょうか? お嬢様」
 
 
お嬢様お気に入りの櫛(クシ)で髪を梳(ト)きながら訊ねると、お嬢様は鏡越しに見つめてきた。
 
 
「……んー、そうね。律花が決めて?」
 
 
「お嬢様のお好きなヘアスタイルにして差し上げますよ?」
 
 
「あたしの好きなヘアスタイルは、律花がしてくれるヘアアレンジ全てよ?」
 
 
そんなことを満面の笑顔で云うものだから、不覚にも頬が緩みそうになってしまった。
 
 
 
 
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