胸いっぱいの愛を君に

演劇

「じゃあ、演劇は由香さんのに決定です!」
えっ、無理!!
本城由香(ほんじょう・ゆか)。
2年の中では、次期部長候補。

あたしが絶叫したのは由香ではなく、
由香の台本。

内容は、
二人の兄弟が白雪姫の本の中に入るっていう、
不思議系の話。
姫はわがまま、
王子は性格悪い、
魔女はナルシスト、
小人は精霊。

その白雪姫の役になってしまったのだ。

やーーーーーーーー!!!!!
なんであたしが演劇なんかあ・・・。
しかも、王子はあの沙衣ちゃんだし。

そんなこんなで、さっそく、練習することに。

最初のところはなんの問題もなくクリア!
次は、問題のシーン。
王子が姫を起こすところ。

とはいっても、由香の台本では
背中をたたいて起こすことになっている。

「おお、なんて可哀想だ、こんなに美しいのに」
沙衣ちゃんの台詞。

沙衣ちゃんが近づく。

バンッ

背中を軽く叩いた。

「あら?私・・・。」
あたしも台詞を言う。

隣を見ると、沙衣ちゃんが
男前に肩を抱いてくれていた。

あたしは
恋をした。

演劇が終わり、みんなが駆け寄る。

「沙衣ちゃん、かっこよかったね!」
「王子やばい!!」

みんながわーわー言っている間、
あたしは座っていた。

「どうしたの?」
由香と美佳が声をかける。

あたしは、言った。
「沙衣ちゃん、かっこいい!」
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