胸いっぱいの愛を君に
「うん、」

「好きなやつって高橋さゆか。
 お前だよ。」

ガタッ
「亜子!」

亜子は走っていってしまった。
それを必死で追いかける。
「亜子!」
「どうせ、知ってたんでしょ?」
「違う!誤解だよ!!」
「ひどいよ、信じてたのに」
「ねえ、亜子!聞いてよ!!!」
「もう顔も見たくない」

あたしは黙って歩き出した。
雨が降っている。
傘を持たずに雨の中を走った。
ずぶぬれで座り込んだ。

「先輩!?」
「沙・・・衣ちゃん・・・。」
目の前には沙衣ちゃんが立っていた。

「どうしたんですか!?傘もささないで」
沙衣ちゃんは『西山』と書いてある家に
入れてくれた。
きっと沙衣ちゃんの家なんだろう。

「先輩、どうかしたんですか?」
沙衣ちゃんは優しく聞いた。
あたしは全部を話した。
全部を・・・。

沙衣ちゃんは軽蔑しないだろうか。
離れていかないだろうか。

そんなこと気にする時間も無かった。

楽になりたかった。
今すぐ。
誰かの手で・・・。
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