胸いっぱいの愛を君に
「ササミ・ストリートなんてのは?」
田中くんが提案。
「セサミでしょっ?」
言い間違い率高っ

この1時間であたしたちは仲良くなった。
あたしたちの予想以上に。
これが続けばいいなってずっと思っていた。
ずっと。

気分良く歩いていると
麻衣に呼び止められた。
「さゆかさあ、由紀くんのこと本気なの?」
「うん、そう、そうみたい・・・なんだ。」
「ふーん。」
きっと、信じてないんだろうなあと思っていたが
予想外のことを言われた。
「頑張ってね。」
優しく微笑む。

麻衣は、あたしの
いいとこ、悪いこと、
全部知ってる。

だからこそ、
何か言われると思って
緊張していただけに、
なんだか拍子抜けしてしまった。

「うちもね、好きな人できちゃったあっ」
優しい微笑みから、
恋する表情に変わった。
最近、無駄に明るかったのは
そのせいだな、とすぐにわかった。
「由紀くんの前の席の、遠野くんなんだけどね?!」
正直、誰だかわからない。

「あんた・・・恋多き女だね。」
「本気になったことのないあんたに言われたくないわ!」
失礼な。
と思ったが、ごもっともなのでやめておいた。

今度の恋はあたしを変えてくれる気がした。

だけど、あたしたちは一緒になれなかった。
あたしが悪かった?
君が悪かった?
どちらも悪かった?

ううん。
どちらも悪くなかったんだよ。

君との出会いを純粋に
嬉しいって思ったんだよ。


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