こころ、ふわり
私の心配をよそに、相川澪はちょっと肩をすくめて
「委員会のあと、あんたともう1人の男子が話してたの聞いちゃったの」
と苦笑いした。
「立ち聞きするつもりはなかったのよ?ほんとはあの時にあんたに話しかけるつもりだったから、廊下でこっそり待ってたのよ。そしたら急に芦屋先生の話が出てきたから」
彼女の話を聞きながら、私はあの時のことを後悔した。
学校の中であんな話をするべきじゃなかった。
誰かが聞いている可能性があるんだってことを今さらながら痛感した。
でも、とりあえず真司と彼女にしか私の気持ちが知られていないと分かっただけでも、ほんの少し安心した。
「誰にも言わないでほしい」
私は素直に彼女にお願いした。
確かに芦屋先生のことは好きだ。
ただ、だからと言って今の先生と生徒という関係を壊すつもりはないし、これから先、この関係が変わるとも思っていない。
自分のこの気持ちを、芦屋先生に伝える気なんてもちろん無いのだ。
「大丈夫、言わないから。だってあんたも私たちのこと黙っててくれるんでしょ?だからお互い様ってことで」
相川澪はそう言ってニッコリ微笑んだ。