こころ、ふわり
それよりも、私にはとても気の重い役割が課せられたことが気にかかっていた。
「実はね、毎年修学旅行で夜にホテルから抜け出して遊んだりする生徒が何人かいるらしくて……私服着ちゃうと先生たちでも時々見逃してしまうみたいでね」
ただでさえ疲れているのに、さらにどっと疲れが肩にのしかかる。
菊ちゃんが私の心情を察したらしく、
「まさかまさか?」
と聞いてきた。
「そうなのー!そのまさか。実行委員がホテルの各フロアで見張り役なの……」
「地獄ー!」
当の本人の私よりも菊ちゃんの方が悲しそうに顔をしかめていた。
「じゃあ修学旅行なのに、萩たち全然楽しめないね」
そうなのだ。
修学旅行のなによりの楽しみって、部屋での深夜に渡って繰り広げられるガールズトークだと思う。
見張りは夜の10時までだから、どっちみち途中参加になる。
実行委員としてやることが多すぎて、むしろ修学旅行に行くのが少し憂鬱になってしまっていた。