こころ、ふわり


職員室に誰か他の先生がいるはずだから、お願いして保健室を開けてもらおう。


そんなことを思いつき、すぐに職員室に行くことにした。


職員室を廊下からのぞくと、夏休み中ではあるものの数人の先生がそれぞれのデスクで仕事をしており、その中から話しかけやすそうな先生を探す。


「誰か探してる?」


不意に話しかけられて、私はビクッと肩を震わせた。


目を見開いて後ろを見ると、どこかで見たことのある男の人が立っていた。


くたびれた濃いグレーのシャツに、ベージュのこれまたくたびれた薄汚れたチノパンを着ており、もっといい服無いのかなぁと即座に思った。


「驚かせてごめん」


彼は私を見て微笑むと、


「どの先生探してる?呼んでくるよ」


と言ってきた。


真夏の冷房の効いていない廊下で、とても涼しげな顔をしていて蒸し暑さを感じさせない。


ちょっと目にかかりそうな前髪とか、少しだけ猫背なところとか、細かいところまで見てしまった。


でも、こんな先生うちの学校にいたっけ?


「聞いてる?」


まったく発言しない私を不思議に思ったのか、彼はグッと顔を近づけてきて


「まさか熱中症とか?具合悪くなった?」


と心配そうな表情を浮かべた。

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