こころ、ふわり


駅前まで来たところで、ふと菊ちゃんが思い出したように辺りを見回す。


「ねぇねぇ、この辺だよね?前に徳山先生が彼女といたのって」


ギクッと私の心が震える。


「もうさ、ここ通るたびにまたいるんじゃないかと思って探しちゃうよね〜!」


何も知らずに楽しそうに笑う菊ちゃんを見ていたら、少しだけ心が痛む。


あぁ、話したい!
でも絶対ダメ。


葛藤しながら、私は何度もうなずいた。


「私もそう思って、今日も何気に探しちゃったよ」


「だよねっ」


菊ちゃんの笑顔を見ながら、徳山先生と澪の顔を思い出す。


もしも菊ちゃんに、徳山先生が付き合っているのはうちの学校の生徒なんだよって教えたら、どんな反応をするんだろう。


彼女のことだから、きっと予想以上にリアクションをしてくれるに違いない。

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