こころ、ふわり


「信じられないよね」
「腹立つわぁ」


などと、走らされることになった部員たちから文句が聞こえてくる。


当然のことながら、私も菊ちゃんも走らなければいけなくなった。


試合に出れるのは十数人なので、かたまってグランドで走る。


息も絶え絶えに、隣で菊ちゃんが「もう帰りたい」と嘆いていた。


走りながら不意にグランドから渡り廊下を見てみる。


夕暮れに照らされながら、以前と同じように渡り廊下の真ん中で、手すりにもたれて芦屋先生がこちらを眺めているのが見えた。


先生はあくまでグランド全体を見ているのだろうから、私のことなんて気づいていないと思う。


それでも、練習中に先生の姿が見れただけで幸せな気分になった。

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