こころ、ふわり


野球部員の打った打球がこちらへ飛んできた。


直感で後輩に当たると思った私は、とっさに彼女の頭を守るように体を入れる。


慌てていたので左足を強く捻ったのが分かった。


すぐに、左の脇腹に鈍くて鋭い痛みが走った。


打球が当たったのだ。


「せ、先輩!!」


甲高い後輩の声が私の耳に届く。


私はというと、声も出ないくらい脇腹も足首も痛くて、その場にうずくまってしまった。


トントン、と野球部が使っている硬式のボールが足元に落ちた。


「す、すみません!!」


今度は野球部員の声なのか、男子の謝る声も聞こえた。


こんな状況なのに、私は弓道の大会のことを考えてしまった。


試合に出ることは出来るのだろうか。

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