こころ、ふわり


「先生、萩のお腹に野球部の打球が当たったみたいなんです」


菊ちゃんがそばに落ちていたボールを拾って、芦屋先生に説明してくれた。


「先輩、ごめんなさい!私のせいで……」


菊ちゃんの隣で、私がかばった後輩が責任を感じているのか体を震わせているのが分かったので、


「違うよ。私がいたところに打球が飛んできたの。だから悪くないよ」


と否定した。


「とりあえず保健室に行こう。歩ける?」


「歩けます」


芦屋先生の問いかけにうなずいて立ち上がってみたものの、捻った左足首がズキンと痛んだ。


本当は飛び上がりたいくらいに痛かったけれど、みんなが見ていると思うとそんな風に振る舞えなくて我慢した。


「吉澤さん。つらい時は正直に言って」


私の我慢は芦屋先生には通じなかったらしく、とても冷静な目で私に語りかけてきた。


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