こころ、ふわり


まずは、袴姿のままだったので着替えを取りに弓道場へ向かう。


歩くたびに左足首と脇腹に激痛が走り、数歩ごとに立ち止まって休憩しながら歩いた。


やっぱりみんなに先に帰ってもらって正解だった。


歩くのがつらすぎて、余計に心配をかけてしまうところだった。


誰もいない暗くて静かな弓道場でゆっくり制服に着替えた私は、また同じペースで来た道を戻る。


薄暗い廊下をソロソロ歩きながら、カバンから携帯を取り出してお母さんに電話をかける。


お母さんはすぐに電話に出てくれた。


『もしもし?萩?』


「あ、お母さん?ちょっとお願いがあるんだけど」


私は簡単に事情を説明して、学校まで迎えに来てほしいというお願いをした。


『えー、ちょっと大丈夫なの?迎えに行ってあげたいんだけど、いまお父さんが車使っててさぁ。会社に忘れ物したって取りに行っちゃったのよ。もし歩くの大変だったら、タクシー使っていいわよ。うちに着いた時にお金払うから』


「そっか、そうする」


タクシーなんてリッチだな、と思いながら承諾した私は携帯をカバンにしまう。


今日はそれでいいとして、明日からどうしよう?
こんな歩き方で通学するのも少し恥ずかしい気がした。


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