こころ、ふわり
やっと玄関口までたどり着いて、靴を履き替えようとしていた私の後ろで
「吉澤さん?」
という声が聞こえて、慌てて振り返る。
芦屋先生だった。
先生もちょうど帰るところだったのか、カーキ色のリュックを背負っていた。
「芦屋先生、今日はありがとうございました」
保健室まで連れていってくれた時は、お礼を言うこともできなかった。
私が怪我をした時にすぐに駆けつけてくれたのに。
先生は首を振って微笑んだ。
「気にしないで。それより怪我は?1人で帰るの?」
「あ、はい」
外でタクシーを呼ぼうと思って、と言おうとしたけれど、芦屋先生が歩き方がおかしい私を心配したのか近づいてきた。
「歩ける?大丈夫?」
ほとんど誰もいない学校の中で2人でいるというだけで、私の胸はドキドキした。