こころ、ふわり
いつも生徒が出入りする玄関口とは違う、先生たち専用の玄関口から外へ出る。
そこから職員用駐車場と小さな貼り紙がされている、少し広い場所へ移動した。
私の歩くペースに合わせて、芦屋先生もゆっくり歩いてくれた。
少し前を行く先生の後ろ姿に、心の中で問いかける。
芦屋先生、私なんかを送るって言ってくれたけど、本当にいいの?
タクシーを呼んで帰るつもりだった。
でも、先生にそのことは伝えなかった。
先生の優しさが嬉しかったし、その優しさを独り占めできていることが幸せで仕方なかったから。
私ってダメだな。
先生に甘えて一緒に帰ろうとしている。
駐車場にはもうほんの数台しか車が停まっていなくて、ほとんどの先生たちが帰宅していることが伺えた。
芦屋先生は黒い車の前で立ち止まると鍵を開けた。
「乗って」
先生は立ったままの運転席に乗り込んで、中から助手席のドアを開けてくれた。