こころ、ふわり
やがて教室に私以外誰もいなくなったので、私はそろそろ行こうとカバンを持った。
すると、ジャージ姿の真司が教室に入ってきた。
「あ、おはぎ」
真司はすぐさま私のそばまでやって来て
「グランドから、お前の姿見えたからさ」
と笑った。
「それでわざわざ来てくれたの?」
「うん、まぁ」
珍しく私をからかうでもなくふざけるでもなく、真司は真面目な顔をしていた。
「もう帰るのか?」
そう尋ねられて、私は首を振った。
「ううん。今日は弓道部に怪我の報告しなくちゃいけないんだ。週末の試合にも出られないし。それが終わったら帰るよ」
本当は芦屋先生に会いに美術室に行こうとも思っているけれど、そのことは真司には言わない。
また批判されるに決まっている。