こころ、ふわり


「俺も週末に大会があるんだ」


真司はおもむろにそんなことを言って、私から視線を外すとチラッと外を見た。


「その大会で優勝したらさ、俺と1日だけでいいからちょっと付き合ってしてほしいんだ」


「え?どこに?」


彼の言っていることがよく分からなくて、私はすぐに聞き返してしまった。


まさか聞き返してくるとは思っていなかったらしく、真司の方はとても驚いた表情になり、そしてすぐに呆れたような声を出した。


「あのさぁ、お前いつまで気づかないわけ?」


「なにが?」


頭の上にハテナマークが並ぶ私の右手を、真司が急にギュッと握ってきた。


「ちょ、ちょっと何す……」


と文句を言おうとしたが、真司の言葉で遮られた。


「優勝したら、デートしてくれって言ってんだよ」


「…………デート?誰と?真司と?」


デートって、あのデート?
男の子と女の子がする、あのデート?


会話がつながらない私にイラッとしたらしく、真司はわざとらしく頭を軽く叩いてきた。


「俺とお前がデートすんの。分かったか?」


「は、はい」


うなずいてから、ん?と疑問に思う。


私とデートってどういうこと?
真司は何を考えているの?


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