こころ、ふわり


資料室を出ると、驚いたことにちょうど芦屋先生がこちらに向かって歩いてきたところだった。


芦屋先生は私と徳山先生が一緒に部屋から出てきたので、とても困惑したような表情を浮かべた。


「徳山先生、吉澤さんに何かしましたか?」


「いえ。まさか襲ったりしてないですよ」


徳山先生にしては珍しく、面白そうに笑いをこらえているのか肩を震わせていた。


澪とのキスを目撃してしまったからか、芦屋先生はあまり徳山先生を信用していないのかもしれない。


私は徳山先生をフォローしなければ、と急いで首を振った。


「ちょっと話をしてて……」


「もしそうだったとしても」


芦屋先生はいつもの穏やかな口調ではなく、少しだけ強めの話し方で私にではなく徳山先生に


「誰かが見ていて、誤解したら困りますから」


と言った。


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