こころ、ふわり
8 臆病者
窓の外を眺めて頬杖をつく。
グランドを見下ろすと各部活が一生懸命練習に励んでいる。
金曜日なので、放課後におこなわれる修学旅行の実行委員会に参加していた。
明日、弓道部の試合がある。
私は応援に行くつもりだった。
真司も明日が陸上部の大会。
さすがに実行委員会に参加してもらうのは気が引けたし、私はしばらく部活を休む予定だったので、真司には部活に行ってもらった。
実行委員会にはクラスからは私が1人だけで参加していた。
窓際の席で実行委員会の開始を待っていると、ぞろぞろと各クラスの委員や先生たちが教室に入ってくる。
芦屋先生がやって来たのを見て、私はぐるっとまた顔をグランドへ向けて避けるようにした。
ついこの間、徳山先生と話をしてからというものの、芦屋先生の顔をまともに見られなくなってしまった。
私は芦屋先生のことが好きだ。
でも、だからと言ってこの先生と生徒という関係がどうなるわけでもない。
おそらく平行線のまま卒業するだろう。
ただし私が先生に好意を見せたり、会いたいと思うことによって芦屋先生の立場が危うくなってしまうようなことはあってはならないのだ。
例えば以前のように、偶然とはいえ家まで送ってもらったり、そんなことをしてもらうのはもうしてはいけないこと。
誰かに見られたら、誤解されてしまうのが先生と生徒。
何もなかったとしても、2人きりでいるということはまずいのだ。
だから私は、芦屋先生とどう接していくべきなのかまだ答えを見いだせないでいた。