こころ、ふわり
「あれ?どうしたの?その左手」
ふと私の左手の包帯が目に入ったのか、澪が少し驚いたように目を丸くして尋ねてきた。
私はあまり目立たないように左手を机の中に隠しながら笑った。
「数日前に怪我しちゃったの。肋骨と足首も。だから私は試合に出られないし、しばらくは練習も行けないの」
「そうなんだ。残念だね。登校も大変そう」
心配そうな表情をする澪を見ていて、分かったことがあった。
澪も徳山先生も、約束を守っているということ。
昨日徳山先生と話した感じだと、私が芦屋先生に好意を抱いているということを知らなかったようだし、今の澪も私の怪我のことを知らなかったようだ。
つまりはきっと、私が芦屋先生と一緒に帰っていたことも知らないだろう。
恋人同士だとしても、言わないと約束したことはお互いに話していないようだった。
どっちみち、私が芦屋先生のことが好きということは別なルートで2人に知れてしまっているのだけれど。