こころ、ふわり
2 視線
夏休みも終盤にさしかかった頃のこと。
私は相変わらず部活漬けの日々を送っていたけれど、それはさておき左手首を捻挫したあの日以来まったく会えない芦屋先生が気がかりで、休憩のたびに弓道場を抜け出して校舎の様々な場所をうろついたりした。
そしていつもその途中で、
あれ?私、何やってるんだろ……。
と我に返り、ため息をつきながら弓道場に戻るという行動を繰り返していた。
夏休みの初めに痛めた左手首は、もうすっかり良くなり元通りになっていた。
午前中だけ部活があったので、午後からは菊ちゃんとカラオケに行くことにした。
そしてその前に腹ごしらえ、ということで二人で駅前のファミレスに入り席につくと、いつものように安いランチセットを注文。
「はぁ~、今日も疲れたぁ」
私が背伸びをしながらつぶやくと、目の前に座る菊ちゃんが頬杖をついてウキウキしたように
「でもさ、明日は久しぶりに部活休みだし!今日はやっと羽伸ばして遊べるね」
と笑った。
「なんか毎日毎日毎日毎日こーーーんなに部活ばっかりやって、いつか干からびるんじゃないかと思うよね」
菊ちゃんの言葉に私は何度もうなずいて、「むしろもう干からびてるかも」と涙を拭くマネをしたら、彼女は楽しそうに笑ってくれた。
そのうち運ばれてきたランチセットに勢いよく食いついた私たちは、午前中の厳しい練習で消費した体力を回復するようにかき込んだ。