こころ、ふわり


菊ちゃんがとてもかっこよく見えてしまった。


「ふぅー、緊張するわ」


胃が痛くなってきたのか、菊ちゃんのお母さんが胃薬を取り出して飲み始める。


それを見ていたら、なんだか私まで胃が痛くなってくる。


お昼休憩を挟みながら、試合は進行していった。


他の部員が敗けていくなか、なんと菊ちゃんは決勝まで残った。


敗けた部員たちも私たちのいる応援席に来て、固唾を飲んで菊ちゃんの試合を見守る。


菊ちゃんが決勝の相手と向かい合い、礼をする。


前に彼女が言っていたことを思い出す。


「試合に出るからには優勝したい」


私はただ凄いなぁ、と感心していただけだったけれど、それを有言実行しようとしている菊ちゃんがなによりも素敵だと感じた。


「頑張れ、菊ちゃん」


ずっと互角に進んでいた試合だったけれど、最後の最後で対戦相手が放つ矢が的の中心から少しズレる。


会場に設けられた応援席は、いつの間にか決勝の2人の試合を応援する人たちでいっぱいになっていた。

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