こころ、ふわり


菊ちゃんが大きく息を吐いて、静かに行射の姿勢に入る。


弓から矢が放たれた瞬間、ワッと歓声が上がった。


的の真ん中に矢が命中していた。


それは菊ちゃんの優勝を示すものだった。


「きゃーーー!萩ちゃん!」


「お母さん!」


私と菊ちゃんのお母さんは2人で抱き合った。


会場の真ん中で、菊ちゃんが私たちに笑顔で手を振ってきた。


私は夢中で菊ちゃんに手を振り返した。


「菊ちゃん!おめでとう!」


ずっと頑張ってきた菊ちゃんが、報われた瞬間だったような気がした。


次の月曜日には、きっと菊ちゃんはクラスの話題の中心になるだろうなと嬉しくなった。


菊ちゃんのお母さんは泣いて喜んでいて、それを見た菊ちゃんが恥ずかしそうに笑っているのも見えた。


「今夜は高級なお肉ですき焼きにする〜!」


と飛び跳ねるお母さんが可愛らしかった。


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