こころ、ふわり
怪我のせいもあって早く歩けない私と一緒に登校してくれる菊ちゃん。
私たちはいつもギリギリに教室に着くので、今日もその通りですぐに自分の席についた。
朝の短いホームルームで私たちの出欠をとるために担任の星先生が毎朝やってくる。
今朝の星先生は目に見えてとても機嫌が良く、教壇に上がるやいなやニコニコと満面の笑みをクラスメイトたちに向けた。
「みんな、おはようございます!」
「おはようございます」
私たちが挨拶を返すか返さないうちに、星先生が発言する。
「今日はとてもいい報告を聞きました。週末は運動部の大会がけっこう多かったみたいなんだけど、このクラスに優勝した子がいます」
試合があったことすら知らない人も多いだろう。
私が菊ちゃんの方を見て笑いかけると、彼女は照れたように笑い返してくれた。
星先生は「おめでとう!」と先に祝福し、名前を告げた。
「弓道部、上田菊江さん!そして、陸上部、倉本真司くん!」
ワァーッとクラス中が沸き立つ中、私は耳を疑った。
数秒の間、星先生を凝視する。
菊ちゃんのあとに真司の名前も言ったような気がしたけれど、気のせいなのかどうなのか。
ゆっくり後ろを振り返ると、菊ちゃんと真司が立ち上がって2人とも嬉しそうに笑顔を浮かべていた。