こころ、ふわり


あろうことか、私は真司との約束ことを忘れていた。


いや、正確に言うと忘れていたというよりも考えないようにしているうちに無かったことにしていた。


むしろ本当に優勝するなんて思っていなかった。


一瞬、真司と目が合った。


急いで視線を外して星先生に戻す。


頭の中では「どうしよう」の言葉を連発するしかなかった。




ホームルームが終わり、菊ちゃんと真司はあっという間にクラスの話題の中心になり、とても賑やかになっていた。


真司が私に話しかけようとすることはなく、心のどこかで安心した。


私は金曜日の放課後に、芦屋先生がどうしても好きなんだと実感したばかりだ。


それなのに真司とのあの約束を果たすのは失礼だと思ってしまった。


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