こころ、ふわり


芦屋先生がいなくなったあと、静かに真司が私につぶやいた。


「な?お前、あいつに相手にされてないんだって。今の態度見たろ?」


「……うん、そうだね」


私はうなずいて、なるべく平静を装った。


私の顔を見た真司が少し表情を曇らせる。


「そんな顔するなよ」


今の私、どんな顔をしているんだろう?
笑ってるつもりなんだけどな。


それなのに、涙が出てきた。


芦屋先生のさっきの表情や言葉から、何の感情も感じられなかった。


私はただの生徒でしかないと思い知らされた。


「ごめん、ちょっと1人にして」


急いでスケッチブックで顔を隠す。


こんな顔は誰にも見られたくない。


何も言わずに真司が隣からいなくなる気配を感じた。


ようやくスケッチブックを顔から離す。


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