こころ、ふわり


芦屋先生が気になる人は、分かってはいたけれどやっぱり私なんかじゃなくて。


だから予防線を張られたんだ。


これ以上近づいちゃダメだよ、って先生が伝えてきたんだ。


優しい先生の、優しいサイン。


今の私じゃまだ簡単に受け入れられないのに。


この間から泣いてばかりだな。


そう思っていたら、突然後ろから誰かに抱きしめられた。


真司だった。


驚いて涙を拭うひまもなかった。


「ちょっと待って、真司。誰かに見られたら困る」


私が慌てて振りほどこうとすればするほど、真司は力強く抱きしめてくる。


「1人になんてできないよ」


彼の声がすぐそばで聞こえて、恥ずかしくて目をつむった。


「泣いてる顔は見ないから。少しは俺を頼ってくれよ」


初めて感じた。
誰かの切ない気持ち。


真司の体から私の体に流れ込んでくるみたいだった。


< 196 / 633 >

この作品をシェア

pagetop